山形の探偵 独り言 その4
- 2018.11.17
- ジグス山形アドバイス 探偵 山形

探偵という仕事に就いてから、いろんな町に行くことがあります。
行ったというのは、通常は観光だったり、移動の途中に立ち寄ったりとか綺麗な景色を見に行ったりすることかと思いますが、探偵の仕事においては長い時間、その土地に滞在することが多いのです。
滞在期間が2,3日はまだいい方で、時には10日とか1ヶ月の滞在も有り得ます。
その間には、町の景色を見るだけでなく、そこに暮らす人々の生活を窺い知ることが出来ます。
住人の視線でそこで暮らす感覚です。
毎日、決まった時間に郵便配達が来る、宅配業者が来る、日によってゴミ収集車が来る。
早朝に散歩する人や、決まった時刻に通勤や通学に出かける人、時には救急車が目の前に現れたりすることもあります。
調査先の近所の方の行動まで分かってしまうものです。
その土地ならではの習慣や行動パターン、食べ物の嗜好など普段住んでいる土地との違いを感じることができます。
その土地に馴染むというか、溶け込んでいくのも探偵の仕事のひとつであります。
長期の調査にまつわる話しをひとつします。
3ヶ月の間、ある家を監視する仕事があった。
その家に出入りする特定の人物を捉えなくてはならない、24時間体制で監視する調査です。
車での張り込みは長期は無理であるために、その建物が見える場所に偶然、借家があったのでその家を借りることにした。
静かな住宅街であるからこそ、よそから来た者に対しては敏感です。
近所へのご挨拶はきっちりしました。
この調査を進めていくうちに、ひとつ障害が出てきた。
調査対象ではない、斜め向かいの家の住人の行動がなんかおかしいのです。
夫婦と小学校の子供2人の4人暮らしの家庭のようであるが、この家のご主人の人相や服装や立ち振る舞いが、ちょっと普通の方とは明らかに違う。
日中は仕事に出かけているようだが、午後の3時を過ぎるとこの家の主人が帰宅していることが多い。
時々、この家の主人と見た目が似たような男性がぞろぞろと集まってくる。
どう見ても一般市民の暮らしというか、住んでいる世界が違うあちらの業界の方々のようでした。
問題の家の前の道路には閑静な住宅街の中、何台もの迷惑駐車の車が停めてある。
この日は、午後4時ころから宴会が始まった、この家の主人と同じような男性が5~6人とその家族も一緒である。
この家の中には、今、少なくとも30人以上はいると思われる。
ちょっとしたホームパーティーであるが、明らかに違和感がある。
家の間取りは平屋の2DK位かなと思われる。
家の中はどうなっているのか、恐らくすし詰めのように思われる。
徐々に盛り上がるホームパーティ、賑やかな様子は近所迷惑の域に達しようとしている。
彼らは周囲に何の遠慮や気配りをすることなく自由に時間を過ごしている。
こんなことが1週間の中で1~2回はある。
ある日は、男性だけが集まって昼前から麻雀をしていた、暑い日であったので窓は全開である。
この方々は一体どんな仕事をして暮らしているのだろう。しかも、奥さんや家族もいる。
時々、調査のために借りているこの家を執拗に覗き込んで、ジロジロ見ていく強面の男性がいる。
夏なのに長袖のシャツそしてシャツの隙間から彫り物らしき絵が見える。
調査を始めて20日程過ぎたある日のことであった。
朝の6時ころ、パトカーと警察車両と思われる車3台が、斜め向かいの問題の住人の家の前に停まった。
警察官らは、一斉にその家に入って行った。
しばらくして、その家のご主人が警察車両に乗せられて行く様子が見えた。
ダンボールに詰められた証拠物と思われる荷物が、次々に家の外に運ばれて警察車両に載せられる。
1時間もしないうちに、警察の車に全て運ばれていき、警察車両は立ち去っていった。
捕物は終わったようだ。
テレビの番組で見ていた「警察24時間密着・・・」取材のあの場面である。
偶然にも目の前で見ることが出来た、決定的瞬間とはこのことである。
夕方のニュースで、今日の事件のことが報じられていた。
反社会的勢力の団体の幹部の方だったようである。
その家から、拳銃も押収されたらしい。
向かいの家は彼らの事務所というか、打ち合わせの場所というか、アジトとして使っていたようだ。
あの日、麻雀をしていたのは組員の方々の重要な会議だったのかも知れない。
もしかしたら、我々を警察の張り込みと疑って見ていたとも考えられる。
パトカーが来たその日の午後には、家財道具も全て運ばれて、その家の家族は誰もいなくなった。
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